再評価後の漢方治療入門―もう一度随証治療・1【新連載】
序論にかえて―漢方の現況と今後の展望
坂口 佳司
1
1坂口循環器科内科医院
pp.73-75
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902644
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「漢方」「東洋医学」「和漢薬診療」「中医学」など,立場によって名称を変える生薬を用いた治療学は,歴史的にみると,明治政府により医学として,また疾病の治療手段として認められなくなった.経過措置として,それまで漢方で医を生業とした者は,その代もしくは後継者一代のみが「漢方医」として医療を行うことが許されたが,これらの「漢方医」が漸次他界するとともに漢方は衰退したわけである.
しかし,医師がいかなる研究や治療を行うにしても,その自由も認めなかったわけではないので,「漢方」の有効性を確信する医師とその提供を求める人たちにより「漢方」の存在はその後も支えられてきた.芸能や宗教などの文化が時の政治権力に認知されなくとも,その良さを理解する人々によって守り育てられたという歴史的事実と同様に,漢方も日本の近代化の中で淘汰の挑戦を受けたわけである.「良いものはそれなりに生き残り,悪いものは自然と滅びる」というのが真実と考えれば,漢方は生き残るのに十分な良さを有していたと理解してよいと思われる.
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