一般外科医のための形成外科手技・11
筋肉弁と筋皮弁を利用した再建法—1.胸壁・乳房の再建
山田 敦
1
Atsushi YAMADA
1
1東京大学医学部形成外科
pp.1779-1787
発行日 1989年11月20日
Published Date 1989/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210562
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はじめに
胸壁(乳房を含む)に原発または転移浸潤した悪性腫瘍,高度の放射線潰瘍,胸骨や肋骨の骨髄炎などの外科治療にあたっては,大きな軟部組織欠損あるいは胸壁の全層欠損を生じるため,解剖学的欠損と機能欠損の両面を考慮した一期的再建が必要である.特に胸壁全層欠損では表面の被覆だけではなく胸腔の密閉(pleural sealing)と胸郭の支持が同時に求められることが多いので,従来は再建が容易ではなかった.しかし,近年の形成外科領域での筋皮弁の概念の発展により,種々の筋肉弁あるいは筋皮弁を利用するとほとんどの症例に対して一期的再建が可能になっている1〜3).この皮弁の利点である良好な血行,豊富なボリューム,広範囲の可動域を利用すると,支持性のみならず胸腔の密閉が確実に得られるので胸壁の再建には最適のものといえる、胸壁の再建に用いられる筋肉は大胸筋,広背筋,腹直筋,外腹斜筋,僧帽筋などがあげられるが,前三者が好んで用いられる.また広背筋や腹直筋皮弁ならびにtissue expanderとシリコン・バック・プロテーゼを利用して乳癌切除後の乳房再建も組織欠損に応じて種々の方法が選択できるようになっている.
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