文献抄録
食道癌の危険因子—喫煙,飲酒,食生活,職業環境との関連
北川 雄光
1
,
安藤 暢敏
1
1慶応義塾大学医学部外科
pp.1776
発行日 1989年11月20日
Published Date 1989/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210561
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食道癌の発生頻度には,地域差,性差,人種差などがあり,種々の危険因子の存在が従来より指摘されている.本研究は,喫煙や飲酒,食生活,職業上の暴露環境を中心に検討を行ったcase-control studyである.Los Angeles在住の20〜64歳までの食道癌患者について,組織学的確定診断のついた時点で,その近隣居住者から年齢,性,人種の適合した対照を選び,それぞれ患者群,対照群とし,両者にインタビュー調査を施行した.1975年1月から1981年3月までの調査期間内にリストアップされた488例の食道癌患者のうち所在の不明な例や調査を拒否した例を除く275例とその対照群が研究対象となった.
従来行われた多くの疫学調査結果と同様に,本研究においても喫煙は食道癌の危険因子であった.禁煙を実行した群は,持続的喫煙群に比して危険度は低く,また,1パック/日以下の群は2パック/日以上の群に比して危険度は低かったが,2パック/日の群と3パック/日以上の喫煙群の間に有意差はなかった.飲酒も危険因子となりアルコール摂取量との相関も認められた.ビール,ワイン,スピリッツ(ウオッカ,ジンなどの強い酒類)それぞれが独立の危険因子となるが,同一のエタノール量で比較すると,スピリッツが最も危険度が高くビールが最も低かった.食生活については,各種食品を摂取する頻度をカテゴリー化して調査した.
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