文献抄録
乳癌の発生に対するカロリー源栄養素の影響について
正村 滋
1
,
藤原 潔
1
1慶應義塾大学医学部外科
pp.884
発行日 1989年7月20日
Published Date 1989/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210392
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動物実験において脂肪,蛋白,カロリーを多量に摂取することが乳癌の増殖に影響を与えることが判明しつつある.食餌の影響は国際間,あるいは国内においても食餌習慣の違う地域によって,乳癌発生率が異なることからも推し測れる.これまで4つのcohortstudyが報告されたが,このうち3つは高脂肪摂取が乳癌発生のriskを高めるという結論を導くには不十分であったが,1つの報告は総脂肪,飽和脂肪の消費量が増加すると乳癌のriskが高くなることを示している.その他にも肉,脂肪と乳癌のriskとの弱い相関が報告されたり,またこれらの間で相関を認めなかったという報告が散見される.著者らはイタリアにおいて乳癌における食餌の影響を調査するためcase-con-trol studyを行い,脂肪や動物蛋白との疫学的関係について報告している.
250人の乳癌女性を対象とし,コントロールは層別無差別に499人の一般女性を選んだ.食餌歴の質問により総脂肪,飽和脂肪,動物蛋白や他の主な栄養素量を推定した.多変量解析の結果,乳癌相対危険度の最も高いものは飽和脂肪,3.0(95%信頼区間,1.9〜4.7)と動物蛋白消費の2.9(95%信頼区間,1.8〜4.6)であった.脂肪摂取によるカロリーが28%未満の者は36%以上の者に比べriskは減少した.同様に,飽和脂肪摂取によるカロリーが9.6%以下かあるいは動物蛋白が5.9%以下の場合にriskが減少した.
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