特集 —そこが知りたい—消化器外科手術のテクニックとコツ96
肝臓
肝嚢胞の手術
小山 研二
1
,
小玉 雅志
1
Kenji KOYAMA
1
,
Masashi KODAMA
1
1秋田大学医学部第1外科
pp.860-862
発行日 1988年5月30日
Published Date 1988/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210054
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肝嚢胞が治療の対象になる場合は,癌化,破裂,感染,高度な圧迫症状のある場合があり,このうち癌化と破裂は絶対的手術適応である.感染や圧迫症状には一時的な経皮的ドレナージもされるが根本的には手術が必要である.一般に巨大な肝嚢胞は肝表面に露出し破裂や圧迫症状が強いが,小さく,かつ肝内深く存在するものは無症状で経過を観察するだけでよい.肝嚢胞に対する手術は,肝切除,嚢胞全摘,嚢胞(壁)亜全摘,開窓術,嚢胞消化管吻合,外瘻造設である.癌化に対しては肝切除,多発性嚢胞には開窓術,感染には外瘻造設を行うが他の場合で嚢胞と胆道の交通がなければ嚢胞亜全摘でよい.ただし,癌化の有無は術中精査で初めて確認される.嚢胞と胆道との交通の有無も同様で術中観察の意義と責任は大きい.胆道との交通路を内腔から閉鎖不可能のさい嚢胞消化管吻合を行う.嚢胞全摘は手術の完全性と将来の癌化を防ぐ意義はあるが出血も多く,現時点では必要性に乏しい.将来の癌化の防止と分泌能廃絶のために残存上皮をアルコール処理しているが,その意義は明確ではない.
肝嚢胞治療上最も重要なことは,癌化を見逃さないことと癌化した嚢胞内容を腹腔内に漏出させて腹膜播種を起こさせないことである.癌化の徴候は内容液が血性,内腔が凹凸不整,腫瘤状の壊死物質の存在である.
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