特集 —そこが知りたい—消化器外科手術のテクニックとコツ96
小腸・大腸
下腹神経および仙骨神経叢の確認,温存
福島 恒男
1
Tsuneo FUKUSHIMA
1
1横浜市立大学医学部第2外科
pp.801-803
発行日 1988年5月30日
Published Date 1988/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210034
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直腸手術の際,下腹神経,仙骨神経叢を損傷すると性機能,排尿障害が出現する.交感神経である下腹神経はTh11〜L2より起こり,腹部大動脈前面を下行に向かい,総腸骨動脈起始部を左右に分けて下行し仙骨前面の外側を走る.副交感神経である*骨盤神経は仙骨孔S2〜4より出て,両者で神経叢を作り,そこから細い枝を骨盤臓器に分布している.下腹神経は男性の射精に関与しており,排尿では蓄尿層に作用している.骨盤神経は男性の勃起に関与しており,排尿では排尿層に主として作用している.直腸癌が神経付近まで浸潤している場合,リンパ節転移が周囲にある場合にはこれらの神経を含めて切除せざるを得ないが,それ程進行していない癌,良性疾患では温存を原則として手術を行う.手術の順序にしたがい腹部大動脈上の下腹神経を確認し,これを下行に追って行き,直腸に行く枝のみを切除して行く.もしも,切除する場合にはどこで切除したかを執刀医は確実に知っている必要がある.
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