特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
小腸・大腸手術
マイルズ手術の際,仙骨の先端に静脈叢があり,出血がとまらない
牧野 永城
1
1聖路加国際病院外科
pp.782
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208674
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マイルズの手術で,中仙骨静脈から出血を起こすと止りにくくて厄介なことは,経験ある外科医なら誰もが知つている.しかし経験を積むと,これを起こさぬような剥離ができるようになる.仙骨前で直腸を剥離する過程で,仙骨前面でこの静脈叢を覆うWaldeyerの筋膜を剥すと,その直下に露出された壁の薄い静脈は,損傷されやすく,また一旦,損傷されると,漏出性の出血が起こり,種々の手段を講じてもなかなか止らなくなることがある.中仙骨静脈でも根幹部の方が止血しにくく,末梢側,つまり仙骨先端部に近い方では,電気凝固か,圧迫でたいてい止血する.圧迫で止血しないときには,細い(4-0,5-0,)血管縫合糸を使い,小さな針で出血部をすくうように拾つて,ていねいに結紮する.外科縫合でそつと結ぶ.これでもなかなか止らず,何度かやつてみても失敗して,困惑の極に達したら,骨盤腔内をガーゼでタンポンして圧迫止血させ,そのまま手術を終え,感染症状が出ぬ限りは,数日から1週位たつてから会陰部から,ガーゼタンポンを一枚一枚ていねいに取り除くとよい.たいていはこれで止つている筈である.術中に内腸骨動脈を結紮した上で圧迫止血をはかると止血しやすいといわれるが,筆者にその経験はない.
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