Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・3
食道静脈瘤に対するシャント手術のコツと実際
加藤 紘之
1
,
田辺 達三
1
1北海道大学医学部第2外科
pp.1381-1387
発行日 1987年8月20日
Published Date 1987/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209796
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手術に必要な外科解剖
図1に肝硬変症などに起因する門脈圧亢進症の門脈走行を示した.門脈圧亢進症における門脈血行動態は病因,病期によつて異なりその造影所見も千差万別である.しかしどのような血行動態であつても食道静脈瘤破裂の制御を目的とする限り画一的で普遍的な術式を確立することが望ましい,著者らの行つている超選択的遠位脾腎静脈吻合術は短胃静脈系をドレナージルートとするシャント手術であるが,造影上左胃静脈系が優位であつてもその適応を制限する心要はない.図2に脾門部を中心とする局所解剖を示した.短胃静脈は胃上部大彎から胃脾間膜を通り4〜5本脾静脈に注ぐが,これらは拡張蛇行し胃噴門部および食道静脈系と豊富な側副血行路で連結されている.一方シャントの選択性を維持する上で重要なルートとして,膵内静脈枝と脾静脈の連絡がある.門脈圧亢進の影響を受けて拡張した膵静脈枝が膵尾部に到るまで多数発達しており,この手術の目的を達成するためには脾静脈と膵体尾部の完全分離を必要とする.本術式のポイントとなる門脈系分枝である.
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