文献抄録
幽門保存膵十二指腸切除術—87症例の検討
前田 京助
1
,
高橋 伸
1
1慶応大学医学部外科
pp.1379
発行日 1987年8月20日
Published Date 1987/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209795
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1935年,Whippleらが十二指腸乳頭部癌に対して,二期的に膵頭十二指腸切除術の成功例を報告し,さらに1945年に一期的根治術を発表して以来,膵頭十二指腸切除術は膵頭部領域の外科的疾患に対して広く用いられるようになつた.その後1960年代までに重篤な合併症である膵空腸吻合部の縫合不全あるいは逆行性胆管炎などを考慮し,再建法や吻合法に種々改良が加えられてきた.換言すれば,膵頭十二指腸切除術の発達史は,消化管再建法の変遷史とも言える.著者らは,1978年にTraver-so and Longmireにより迷走神経支配をうけた幽門輪を含む全胃温存下に施行された膵頭十二指腸切除2例に範をとり,1979年から1985年までに87例の幽門保存膵十二指腸切除術を行い良好な成績を得,これを報告している.
幽門保存膵十二指腸切除が施行された87名は,男性58,女性29,年齢は19歳から82歳までで平均53歳であつた.87名の疾患の内訳は悪性新生物57,膵炎28,良性胆道狭窄2であつた.術後早期合併症で最も多かつたものは胃の内容物停滞で約50%の患者に認められ,うち1名に幽門形成術を要した.胆汁瘻を6名,膵液瘻を7名に認めた.術後後期合併症を15名の患者に認めた.このうち5名の吻合部潰瘍を認め,2名は保存的治療無効のため再手術を要した.術後早期,後期合併症あわせて16名に再手術を施行した.
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