特集 Controversy;皮切と到達経路
〈コメント〉—食道静脈瘤手術
小林 迪夫
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1大分医科大学第1外科
pp.1335-1336
発行日 1982年9月20日
Published Date 1982/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208117
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はじめに
食道静脈瘤に対する外科治療として,本邦では現在,選択的シャント手術か直達手術のいずれかが行われる趨勢にある.選択的シャント手術のさいの術野への到達経路は専ら経腹的アプローチであるが,直達手術においては,これ以外に経胸,経胸経腹,経胸経横隔膜的アプローチなど種々の到達法が用いられており(表1),それぞれに術者の理論とそれに基づく創意・工夫がなされている.しかし,食道静脈瘤に対する皮切と到達法を論ずる場合,①手技の簡便さ,②術野の展開がすぐれていることなどの一般外科手術に共通する問題の他に,食道静脈瘤手術に特有な③胸壁,腹壁副血行路の損傷をさけ出血を防止すること,④poor risk例に対し手術侵襲,特に肝臓への影響を最小限にとどめることなどについての配慮が必要であろう.
したがつて,食道静脈瘤手術においては,救急手術・待期手術の相違はもちろん,患者risk,脾腫,腹水の有無,胃病変の合併,手術既往歴,循環呼吸器系合併症の有無など,種々の条件を考慮した手術術式の選択がなされなければならず皮切,到達法もそれにしたがつて個々の症例で選択する柔軟さが必要といえよう.
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