文献抄録
乳癌術後患者は大腸癌のリスクが高い
山高 謙一
1
,
小平 進
1
1慶応大学医学部外科
pp.355
発行日 1987年3月20日
Published Date 1987/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209652
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大腸癌のスクリーニングを効率的に実施する上で重要なことは,大腸癌リスクの高い集団を明らかにすることである.今回の研究では,大腸以外の癌患者の異時性大腸癌発生の頻度を調べてみた.方法はOur Lady ofMercy医療センターで1958年から1982年までの25年間に治療をうけた7,605人の腫瘍患者登録より得られた資料を用いた.多発癌の定義は1932年,WarrenとGatesが設定した基準に従い,診断時期から観察しえた期間をperson yearsに換算し,この他に年齢,性,部位別発生頻度をもとにした期待値と異時性(2次)癌の発生した数とを比較して,リスクファクターを決定した.
結果は癌患者7,605例のうち206例(2.7%)に多発癌が発生し,部位では乳腺と大腸に多発癌の発生が多く,それぞれ4.6%,3.9%であつた.2次癌の発生部位では,大腸が39例(18.6%),乳腺が48例(22.8%)であつた.2次癌として大腸癌の発生をみた原発癌としては乳腺と大腸が多く,それぞれ1.01%,0.97%であつた.乳癌にひきつづき発生した2次癌を部位別にみると対側乳腺が50%(27/54),大腸が22%(12/54)と高かつた.一般人口に比べ乳癌術後にこれらの癌の発生するリスクは対側乳癌が2.1倍,大腸癌が2倍であり,乳癌患者が2次癌として対側乳腺に悪性腫瘍が発生する率と大腸癌が発生する率はほぼ同じであつた.
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