My Operation—私のノウ・ハウ
胃・十二指腸潰瘍手術
前田 昭二
1
1前田外科病院
pp.71-76
発行日 1986年1月20日
Published Date 1986/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209231
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適応と手術
胃・十二指腸潰瘍の発生機転については近年次第にその多因性,複雑な病因論が解明されつつある.とくに1982年にCimetidinが導入されていらい,治療面についても画期的な変換がみられるようになり,その結果,潰瘍症に対する胃切除術がどの施設でも半減したのは周知のことである.しかし,どうしても外科的に処置しなければならない,穿孔による腹膜炎の発生,内視鏡的操作で止められない一部の大出血,随伴性狭窄が陳旧化して通過障害が固定したもの,などの絶対的手術適応は依然として従来と同率にあることも事実であり,特に十二指腸潰瘍のこれらの合併症はこれらの潰瘍症にたいする手術療法の主な対象になるであろう.日本人の潰瘍症の酸分泌病態は時代とともに変化しつつあるといわれ,十二指腸潰瘍の発生機序が単一のものでないので,治療面においても単一の手術では不適当であるとの考えから胃酸分泌領域に照準を限局した各種の選択的迷切術の妥当性が論じられているが,煩雑にして侵襲の大きいこの手術後には意外に愁訴が多く,肝心の潰瘍再発率に関しても5%前後の報告が多く,理論的には極めて合理的ではあつても,必ずしも患者すべてが満足していない難点がある.良性疾愚の手術は一度手を下した以上は患者が完全に病苦から解放され,できるだけ短期間に以前より良好な肉体的条件をもつて社会復帰できなければならない.
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