特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
肺・縦隔手術
上葉切除・肺切除の際,気管支断端部で気管支狭窄を作つてしまつた
長田 博昭
1
1聖マリアンナ医科大学第3外科
pp.853-854
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208716
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一般に気管支断端はどちらかと言えば長過ぎるかなと思う方が多く,幸か不幸か断端狭窄に遭遇した経験はない.そこで想定問題として考えさせて頂く.
右上葉支断端の場合は縫合操作により上葉支口およびその付近が内腔に陥入するようになつて中幹に対する狭窄を生じ得る.上葉支断端残存部が短か過ぎるためであろうから縫合糸を抜いてやり直しても無理であろう,上葉支口の幅を底辺とし内側に向う楔状切除を加え部分的な気管支成形術を施す必要がある(図1).中幹にかかる末梢側への張力は大きくはないので縫合に亢う力は余り問題にはならないが,困難があれば肺靱帯の切離と心膜切開による右肺門の授動を追加する.部分形成でも狭窄がとれないようなら思い切つてsleeve resectionをする他はないだろう.この位置での管状切除端々吻合は比較的容易であるし,末梢側の授動は上述の内容で十分である.但し肺門周辺の心膜切開は全周性に完全に行う.上葉支口の幅だけの短縮であるから両断端の口径の調整なしに3-0または4-0 dexon糸にて結節縫合する.張力の比較的小さい部分であるから縫合不全よりも肉芽形成によるlate stenosisを心配し吸収性の糸を用いるのが良い.
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