特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
肺・縦隔手術
肺区域切除を始めたが途中で切除線に迷つた
長田 博昭
1
1聖マリアンナ医科大学第3外科
pp.852
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208715
- 有料閲覧
- 文献概要
何年か前の胸部外科学会で故塩澤先生が「葉切でも良い場合は,肺区域切除のように労多くして合併症の多い手法を用いるより葉切を選ぶべきである.」と言う意味の発言をしておられたのを覚えている.しかし例えば上葉肺癌でS6に浸潤の疑われる症例でのS6合併区切や良性疾患での区切,それに高齢者肺癌でlimited surgeryの見地からする区切等々,今日でも必然性を持つ術式であり,私も質問のような事態にしばしば遭遇する.
普通順行性に肺門で肺動脈区域支と区域気管支を切断し,区域間静脈を残そうと剥離を始めたが,静脈支の分布を見失い,どつちに進んでも気漏と出血とを増すばかりと言う事態が多い.区切例で肺区域隔壁がきれいに展開できるものもあるが,その隔壁の存在すらも疑わしくなるような例も少なくない.実際考えて見れば肺葉間ですら分葉不全とて実質性連続を示すものが非常に多いのであるから区域間においても隔壁を欠くか発育不良であつても不思議はないと思つている.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.