新形影夜話・10
術者の責任感
陣内 傳之助
1,2
1大阪大学
2近畿大学医学部附属病院
pp.1620-1621
発行日 1983年11月20日
Published Date 1983/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208486
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医師としてもつとも欠くべからざる条件は責任感である.細心の注意をもつて一分の隙もない処置をとることは,生命を預かる医師にとつては当然のことである.なかでも外科医には直接生命の危険に曝される手術ということがあり,その上これは常に数人のチームによつてなされるものであるから,自分一人の問題ではなく,チームの一員の失敗でも術者が責任をとらねばならない.この点,内科系の医師となると,自分一人単独で患者の診察,治療を行うことが可能であるので,自然立場が違つてくる.すなわち内科では一人一人の自己の責任で自分の思うような治療ができるが,外科では術者を中心とした一致協力がなければ,いい手術はできない.したがつて外科医にはおのずからチームの一人一人に協調の精神がなくてはならないし,術者には助手を手足のように使いうるあたかもシンフォニーの指揮者のような統率力が必要となつてくる.
もちろん,必要な場合には参加している各員の衆知を集めることもないではないが,これは術前のカンファレンスでほぼ方針は決つていることが多い.それでも手術の途中で思わぬ所見に遭遇したり,不慮の事故が起こつたりすると,術者は各メンバーの意見を聞かねばならぬこともある.しかし,協議の結果,方針の決定は,術者自身が毅然とした態度で全責任をもつてなすべきものである.
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