新形影夜話・4
医師と患者との間
陣内 傳之助
1,2
1大阪大学
2近畿大学医学部附属病院
pp.500-501
発行日 1983年4月20日
Published Date 1983/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208286
- 有料閲覧
- 文献概要
昔は医師の数も足りなかつたし,患者の方も健康保険でなく自費だつたので,医師と患者との間の人間関係は信頼感で結ばれており,万一事故が起こつても,そういう医師を選んだ患者側の責任ということですまされていたのであるが,今日では医療行為が医師と患者との間の契約というドライな関係になり,結果がよくなかつた場合には契約不履行ということになつて,悪くすると法のさばきを受けるようなことになりかねない.
とくに,外科医の場合には手術という患者にとつては好ましくない治療法であるだけに,外科に入院するにはしたものの,できれば手術をしないですむのではないかという期待をもつている患者も多い.それだけに,この患者がどの程度まで自分の受ける手術を理解しているか,そしてどの程度積極的に手術を受ける心構えができているかをよく知つておく必要がある.患者自らが進んで外科に入つてきたのだから,手術をするのは当然だといつたような態度は禁物である.外科には来ても,医師は患者の気持になつて考えてやり,なるべく不必要な手術はしないですむように,まずできるだけ手術を避けて他の治療法はないかと考えた上,それでも仕方がないときはじめて最後の手段として手術を選ぶのだという医師の気持を患者によくよく理解してもらつておく必要がある.あの病院に行くと,ろくに検査もしないですぐに手術をされるという評判の病院があるが,こんな病院は今日では通らなくなつてきた.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.