連載 医学と文明・7
医師と患者の間
水野 肇
pp.920-924
発行日 1973年7月1日
Published Date 1973/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916710
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医学が進歩しても‘人間関係’は必要か
最近‘医師と患者の人間関係’が,医療の世界で非常に問題となっているようである.それも,日本だけではなく,世界的に,いろいろの角度から論ぜられており,国民の受け取り方もまちまちである.きわめて素朴な感覚からいうと‘医療は医師と患者の人間関係のうえにおいてのみ成立する’と医師たちは言うのに,現実の医療は,診療所にいけば‘カミカゼ・ドクター’といわれ,病院に行けば‘3時間・3分’といわれるように,待たされる時間ばかりが長くて,診察時間はきわめて短い.これでは,人間関係が成立する余地がないではないかという疑問をもっている.
一方,医師のなかには,医師と患者の人間関係などというのは前世紀の遺物で,臨床検査も発達したし,コンピュータも十分に医学に導入されるようになった。診断の武器もそろったので,人間関係よりも科学的データが勝利を占めるのだと言う.国民は,このどちらの意見を採用していいかに当惑している.しかし,実感的には,カミカゼ診療には‘医師に診てもらった’という満足感がないし,コンピュータ診断のほうも味気ない気持ちが残り‘はたして診断は的中しているのだろうか’と考えてしまう.そして,実際には的中しないこともけっこうある.
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