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皮切法
基本的にはよく似た手技をとつている.開胸することなく開腹操作のみで肝切除を施行しているが,以下菅原論文との相異点を述べる.まず,菅原論文では腹腔内諸臓器の検索を左右いずれかの肋骨弓下斜切開後に行つているが,われわれは正中切開創で開腹し,ここで腹腔内精査を行つている.すなわち,正中切開における皮切の上線は左右肋骨弓の延長線の正中交点より1cm上方から下線は剣状突起のつけねと臍を結ぶ線の頭側2/3までをまず切開して開腹し,ここで腹腔内精査を行う.剣状突起は切除せずその左右いずれかに沿つて根部まで筋膜を切開している.この方法で剣状突起が術野の妨げになることはない.一方,剣状突起切除後,この部に持続性の疼痛を訴えたり,巨大なexotsosisをきたした症例を経験したことがある.次いで,この正中切開創の下端より右方は右中腋窩線上で肋骨弓より4〜5cm下方の部を結んだ線上を切開して手術創を延長しており,左の場合には左前腋窩線上まで同様に切開している.しかるに左右両葉に病巣が存在する場合には開腹創を両側に延長するが,左側の病巣でも巨大なときには右葉を授動すると肝門部処理が容易となるため左右両側へ延長することがある.また側方切開に際し,菅原論文の肋骨弓下斜切開では腹直筋をリスター鉗子ではさんで切離しているが,われわれは特に鉗子ではさまず電気メスにて切離しつつ,やや太い血管は個々に結紮切離している.また手術野を得るための特殊な牽引器は使用していない.腹壁に4枚ガーゼをあて腹壁を保護しつつ肋骨弓を鞍状鉤を用いて牽引しているが,右葉の脱転に際しては患者の体位を左15〜20°rotationすることにより十分に視野を得ることができる.
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