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はじめに
発癌およびその増殖に対する栄養条件の影響を検討した研究は,実地臨床の立場からも重要な課題であるが,今日までのところ十分に解明されておらず,古くて新しい問題である.TannenbaumおよびSilverstoneは自然発生癌,化学発癌,移植腫瘍について系統的研究をなし1-9),これの総括的結果を述べている10).とくに腫瘍発生およびその増殖に対するカロリーの影響についてはWhi—te11)はこれに関する諸研究を集め,総説を述べている.その総説によれば,一般に投与カロリー量の増加にともなつて腫瘍の発育も促進される傾向にあり,逆に低カロリー状態下では宿主の発育低下と共に腫瘍の発育も遅延する傾向がみられるとしている.Tannenbaum12)はハツカネズミの3,4-benzpyreneによる皮膚腫瘍の誘発に対する投与カロリーの影響を検討した結果,腫瘍誘発期,腫瘍増殖期を通じて高カロリー補給を行なつた群では発癌率も増殖も著しく促進されたと述べ,また各時期で投与カロリー量の高低を交換した結果では腫瘍増殖期の方が投与カロリー量に左右され易いとしている.癌の増殖に必要な栄養素材についてはJ. F. Henderson及びG. A. LePage13)が多数の文献的考案をしているが,その結果は摂取栄養素との関係は無視し得ないとしている.
発癌および増殖に対する栄養条件の影響——つまり発癌および増殖を飼料によつてコントロールしようとする試みは古くから研究されており,カロリー源である蛋白質,糖質,脂質の三大栄養素が問題となるが,ここでは蛋白質,なかでも特にアミノ酸インバランスについて著者らの実験的事実と若干の文献的考察を加えると共に,最近の高カロリー輸液下におけるアミノ酸インバランスの臨床的応用の可能性についても言及したい.
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