わが教室自慢の手術器具・7
バルーン付カテーテル,屍体内臓器灌流装置
本多 憲児
1
1福島県立医科大学第1外科
pp.878-879
発行日 1980年6月20日
Published Date 1980/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207456
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私の恩師武藤先生は手術は腕で行なうものであり器械で行なうものではない故,新しい器械等は必要なく,何でもそこにあるもので手術すればよいというご意見であつた.私も先生の教えが正しいと考えておるので残念ながら教室自慢の手術器具はないと自慢している.
但し私は人の生命は神より与えられたものであり,生命の果つるときは神がお召しになると考えているので,神は生きている人の生命を健やかに育てるには神の御召にあずかつた人の一部でも生きている人のために役に立てば神の御心に従うものと考えている.この意味に於て神に召された方の臓器を神により生命を与えられている人のために移植することが許される.しかし「脳死」が法的に認められていない日本においては完全なる古典的死後臓器の提供をうける.しかし,ここで問題なのは温阻血時間(Warm Ischemic Time, WIT)である.すなわち死の宣告より臓器摘出までの時間である.日本の慣習よりすれば「只今おなくなりました」と宣告して直ちに臓器摘出では「死の尊厳」の冒涜となりまた遺族の心情を害することにもなる.このことは屍体臓器移植の大きなネックであつた.教室では家族が死者との別れをおしむ死後数時間は開腹することなく屍体をそつとして屍体内臓器を新鮮に保存する方法がないかと考えバルーン付カテーテル及び屍体内臓器灌流装置を考案した.本装置により既に4遺体より8腎の提供をうけ,8人の受腎者に腎を移植,非常に良好な成績を得た.以下その構造等について説明する.
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