症例集
屍體眼の手術,特に虹彩切除と緑内障との關係
佐藤 邇
pp.154-155
発行日 1950年4月15日
Published Date 1950/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200563
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私は前に屈折と眼軸長との関係を調べるために,人間の眼球を解剖した事があつたが,其の折に眼軸長を測定しただけではつまらない故,毛樣筋や水晶体の状態も調べようとした.此の場合眼球を開いて,種々調べた.始めは此の目的のためにのみ單に眼球を角膜輪部で切開して居たが,手術の練習に用いつつ眼球を開いて見ようと云う考えが出た.
人間の屍体眼球の手術は,一口に云うと生体の手術よりも,むづかしいと思う.其の理由は屍体眼球は出血や,眼球の運動は無いのは良いが,水氣がなくて.もろく,結膜の剥離が困難で,特にTrepanationに際して角膜の剥離が困難で,且つ結膜が刀や鋏に貼り付いて困る.眼球は水分が減つて陷凹して居るのが普通故,視神経より食塩水を注入して「グレーフエ」,或は鎗状刀で切るのであるが,前房が淺くなつて居る故,切開がむづかしい.虹彩は彈力がなくなり,硬くなつてピンセツトでつまむ事や切る事が困難になる。
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