実験講座 灌流実験法
臓器灌流実験法の実技
橋本 虎六
1
1東北大学医学部薬理学教室
pp.88-94
発行日 1971年4月15日
Published Date 1971/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902888
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Ⅰ.緒言
求められるままに本講座で灌流実験法について,私が経験的に知つている総てを述べてみたいと思う。ここで私は灌流実験法を歴史的な発展の線に沿つて記述するのを意識してやめようと思う。私がここで灌流実験法というのは,動物の血液で灌流する実験法であつてRinger液とかTyrode液とか,これに膠質を加えた人工灌流液で灌流する方法ではない。であるから人工灌流液で灌流実験をされようという方々には,あまり参考にならないと思う。その代りに末梢臓器の機能を生化学的,生理学的,薬理学的に研究し,さらに組織学的な研究にまで進めようとされる方には,大いなる力となり,適切な助言者となりたいと切に願うものである。またここで私はやつた事のない事を,ただ文献的な知識で紹介したり批判したりすることは一切やめる。これは私の35年余に渉る実験薬理学者としての経験で,そういうことは実際には役に立たない。これから灌流実験をやろうという人や,やつているが不安をもち助言を求めている人にはとまどいを与え自信を喪失させるであろうと思うからである。私はこれらの方々を私どもの実験室にまねいて,心ゆくまで話し,聞き意見を交換して勇気を与えたいと念願してこの講座を始めようと思う。もし私の述べる所に明らかでない所があれば,私の一人よがりや不用意の点があつたと思つている。
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