Medical Topics
生ける屍について,他
K.N.
pp.100-101
発行日 1969年7月1日
Published Date 1969/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914549
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最近,心臓移植手術にからんで,死の定義が問題になっている。だが,かりに今,自然の心臓とほとんど変わらない機能をもった優秀な人工心臓の植え込みが可能になったとしたらどうか。これは,人の心臓を他の人に植えることの成功よりもはるかに理想に近いものと思われる。では,もしこの理想が実現したら,死の判定に関する議論は宙に浮いて,意味のないものになってしまうであろうか。答は否である。
回復不能の呼吸停止と,不可逆的な昏睡状態にある患者にレスピレーターをつけて,生命を維持(この場合,生命といっても植物的な意味でのそれであるが)している場合を考えてみよう。これを続ける時は,家族の心痛をさておいても,莫大な経済的負担はもとより,病院としても人手と施設の不足から,他の患者に対する治療がそれだけうすめられてしまう恐れもある。
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