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1952年,Jones,Smith等による十二指腸乳頭形成術Sphincteroplastyは従来の十二指腸乳頭切開術Sphincterotomyに比して,オツジ括約筋が完全に離断されるため,十分な総胆管末端部開口が得られ,かつ開口が持続する利点がある.この手術術式においては,総胆管粘膜と十二指腸粘膜が確実に縫合される事が要求される.しかしながら十二指腸乳頭部はKocherの十二指腸授動術を行なつてもかなり深部に位置し,手術野が狭く,操作に多大の困難性を経験する事が多い.この際教室では従来,上十二指腸総胆管切開supraduodenal choledochotomy開孔より,尿道ブジーを挿入し,ブジー尖端を総胆管の十二指腸開口部に位置させ,ブジーを総胆管内に引き込みながら,縫合切開操作を繰り返して来た.しかしながら尿道ブジーの尖端は半円形をなし,縫合針刺入に際してかなりの不便を感じていた.著者は数年前より尿道ブジー尖端に,図1のごとく彎曲溝を作製し,それに沿つて縫合針を刺入(図2)結紮し,左右の結紮糸の間を十一時の方向に切断し,確実に総胆管粘膜と十二指腸粘膜を縫合するようにしている.この際,ブジーを少しずつ後退させ,縫合切断を繰り返し,得られた開口が拡張せる総胆管径と同じ位になったところで,開口の最深部に縫合針を刺入,結紮する.この中山式十二指腸乳頭形成術用ブジー*を用いると総胆管粘膜と十二指腸粘膜との縫合が確実かつ容易に行なわれるため,切開線が総胆管十二指腸部を通過して,腹膜腔内に到達しても,胆汁の腹膜腔内漏出の危険を防止することができ,かつ縫合針刺入が簡単であるため,手術操作が極めて迅速に行なえる利点がある.
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