- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
内視鏡的膵・胆管造影(ERCP)は1955年, Doubiletによつて試みられた術中膵管造影にその端を発している.その後Vater乳頭部の膵胆管開口部から逆行性に膵胆管を造影する試みがいろいろなされたが,十二指腸ファイバースコープを使用してERCPとして確立されたのは,1969年本邦で大井,高木らによつてである.現在では十二指腸ファイバースコープの改良,手技の改善によつて膵胆道疾患の診断能の高い検査法として実用化され,多くの施設で行なわれている.
ERCPには通常,十二指腸ファイバースコープを用いる(FDS-L,JF-B2,FD-QBなど).胆道造影を主目的とする例ではGIF・P2を使用して十二指腸内で反転させて膵胆管開口部に挿管することもある.術前処置としてERCPを午前中に行なうときは患者は絶飲食とするが,午後に行なうときには朝食に流動食をとらせ,昼食は絶食にする.検査前に咽頭麻酔を行なつて,Coliopan 8mgを筋注し,Diazepam 5mgを静注する.患者を左側臥位にしてスコープを十二指腸内に挿入して乳頭部をみつける.手技に慣れればほとんどの例で,検査開始後3〜5分で乳頭部を発見できる.乳頭開口部に挿管するためには乳頭部を正面視しなければならない.そのためにはスコープ.の上下左右のアングルを調節するか,患者を腹臥位にする.これらの手技によつて乳頭部が正面視できない場合はスコープを胃内まで引き抜いて十二指腸に挿入しなおす.つぎに開口部にカニューレを挿入するが,気泡の混入を防ぐためにあらかじめ造影剤をカニューレの中に満たしておく.開口部に垂直にカニューレが挿入されると膵管が造影される例が多い.胆管を造影するためには開口部の11時方向の上方にカニューレが向くようにスコープを操作して挿入する.膵管を造影する場合には,膵管の2〜3次分枝までの造影に止めて,腺房造影を避けるようにする.胆管造影で閉塞や狭窄があれば,その部を越えて肝側に造影剤を注入しないようにする.これらの処置は急性膵炎や重篤な胆管炎などERCPの合併症を防止するために必要である.膵胆管が造影されたならばX線撮影を行なう.左側臥位,背臥位,斜位,腹臥位,立位など病変の存在が明らかになる体位で撮影を行なう.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.