Spot
輸血フィルターの問題点
隅田 幸男
1
1国立福岡中央病院外科
pp.1146-1148
発行日 1977年9月20日
Published Date 1977/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206807
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輸血の歴史とフィルター
本邦ではじめて輸血を試みたのは九州大学第2外科の後藤七郎教授である.彼は英国の病院での経験からクエン酸ソーダを抗凝固剤とした300mlの新鮮血を殺菌ガーゼで濾過し,これをサルバルサン注射器で50ml/分の速度で輸血している.その後,東京大学分院に居た塩田広重教授も後藤教授から借用したジャンブロー氏輸血器で輸血を試み,大正8年(1919)2月28日の東京外科集談会で報告している.後者にはフィルターに関する記載が無い.著者は1951年に受血者となつた経験があるが,この時もベッドサイドにつるしたガートルの入口にガーゼを重ねて,ここで採血したばかりの血液を看護婦がしきりに濾過していたのを思い出す.
驚いたことに,今日でもまだまだガーゼあるいはこれと大差ないともいえるフィルターが輸血時に使用されているのが本邦の現況である.フィルターはそんな幼稚なものではだめなのだということが理解されはじめたのは,オレゴン大学医学部のSwank,R.L.(1961)らが「保存中の血液変化—日数を経た血小板と白血球の粘着能の測定とフィルターによる除去」という画期的な論文を発表してからのことである.
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