臨床検査のピットフォール
不適切なフィルター変更による脳波の異常
三浦 祥子
1
1東北大学医学部保健学科臨床生理検査学分野
pp.704-708
発行日 2016年8月1日
Published Date 2016/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206546
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はじめに
近年,デジタル化に伴い,脳波計にはさまざまなフィルターが装備されているが,主なフィルターは,低い周波数成分を取り除く低域遮断(ローカット)フィルター,高い周波数成分を取り除く高域遮断(ハイカット)フィルター,交流障害を取り除くハム(AC)フィルターの3種類である.脳波計では,低域遮断周波数を慣習的に時定数(time constant)で表す1)ため,検査スタート時の標準的フィルター条件は,時定数0.3秒,高域遮断フィルター120Hz,ハムフィルターOFFになる.この条件によって,脳波検査で必要とされる0.5〜60Hz(100Hz)の周波数の波を見ることが可能となっている1).
さらに,注目する周波数の波を際立たせたり,アーチファクトなどの不要な周波数成分を取り除き,判読の精度を高めるために,フィルターの変更が必要となる場合がある.しかし,使用にあたってはおのおののフィルターの特性を理解し,適切な使用をしなければ大事な脳波所見を見逃したり,誤読してしまうことにつながる.本稿では,これら3種類のフィルターの特性とともに,不適切な使用による具体例も挙げ解説する.
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