Japanese
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特集 非癌性乳腺疾患の外科
乳頭の異常分泌—処置と問題点
Treatment for nipple discharge
榎本 耕治
1
,
伊藤 三千郎
1
,
安村 和彦
1
,
浅越 辰男
1
,
須田 厚
1
,
竹下 利夫
1
,
阿部 令彦
1
Kohji ENOMOTO
1
1慶応義塾大学医学部一般外科
pp.583-591
発行日 1977年5月20日
Published Date 1977/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206734
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はじめに
乳頭の異常分泌には,授乳の際みられる白色の乳汁が授乳期以外に分泌される異常分泌と,乳管拡張等の際に陥没乳頭の乳管開口部にみられるコンデンスデミルク状のもの,及び乳管内乳頭腫,乳腺症や乳癌等にみられる血性或いは漿液性の乳頭分泌がある.授乳期以外の白色乳汁分泌は脳下垂体をはじめ全身的な検索が必要な場合が多く,それ相応の対処が必要である.乳管拡張症に伴う白色乳汁分泌は,厳密には,分泌というよりも,脱落上皮をはじめとした乳管内の蓄積物であり,放置しておくとコレステリン結石等を形成し,乳管周囲を刺激して炎症を起こし,しばしば膿瘍形成する.従つて,炎症のない時期には湿布ガーゼ等で清拭しておく必要があり,時には陥没乳頭の整形手術を要することもある.膿瘍を形成したものには乳暈と皮膚の境界部で半円周状に切開し,排膿を行ない,Juxtaareolar fistulaとし,時期をみて瘻孔切除(fistelectomy)及び乳頭形成術を行なつている.
血性或いは漿液性乳頭分泌物の場合は,大部分が乳管内乳頭腫或いは乳管内乳頭腫症であるが,乳癌であることも稀でない.特に早期乳癌のうち,腫瘤をふれない乳癌T0の約70%は,この血性或いは漿液性乳頭分泌が来院時の主訴であることを考慮すると,如何に取扱うか慎重を要する1).また,この血性或いは漿液性乳頭分泌を来たす症例の切除標本には良・悪性の鑑別のむずかしい症例が多々あるので,慶大外科で1967年から1974年の間に取り扱つた血性或いは漿液性乳頭分泌のあつた症例に基づいて種々の問題を検討する.
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