特集 外来診療・小外科マニュアル
Ⅳ.胸部
54.乳頭異常分泌
西村 令喜
1
Reiki NISHIMURA
1
1熊本市立熊本市民病院外科
pp.146-148
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902931
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
疾患の概念
乳頭異常分泌は日常の診療においてしばしば遭遇する病態であるが,その原因となる疾患の同定は容易ではない.原因として乳腺内の器質的変化に伴うものと,ホルモン刺激などの機能的なものに大別される.外科の治療対象となるのは前者であり,その主な疾患としては乳管内乳頭腫,乳腺症,乳癌がある.とくに乳頭異常分泌が唯一の症状であるT0乳癌も含まれることより患者への説明などにおいては慎重な対応が求められる.
Microdochectomyは1964年にAtkinsら1)が主乳管とそれに所属する末梢乳管と乳腺を切除する乳管区域切除を確立して以来,乳頭異常分泌症に対する標準術式として用いられるようになった.表は当科で経験した乳頭異常分泌で確定診断の得られた症例(腫瘤なし)をまとめたものである.肉眼的に血性か,細胞診で赤血球を認める症例で乳癌が発見されていることが分かる.これに対し,細胞診でのclass分類ではⅠ・Ⅱにおいても乳癌の可能性は否定できない.このことより診断手順としては,まず視触診での腫瘤の有無,マンモグラフィーでの腫瘤像,石灰化の有無,さらに超音波で腫瘤像の有無などの検索を行い,いずれにおいても異常を指摘できない時に分泌物の細胞診を行い,さらに検索を進める.ここで非血性で赤血球(−)例は経過観察とする.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.