Japanese
English
特集 術後の急性機能不全
術後急性心不全
Postoperative acute cardiac failure
林 四郎
1
Shiro HAYASHI
1
1信州大学医学部第1外科
pp.1397-1403
発行日 1976年11月20日
Published Date 1976/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206614
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はじめに
手術の安全性を高めるためには,正しい手術の適応,適確な手術手技,麻酔とともに術前から術中,術後にかけてきめ細かい管理を必要とするが,術後の管理上本稿の主題である重要臓器の急性機能不全など,重篤な合併症の発生を防止し,不幸にして発症しかかつた場合には間髪をいれぬ早期治療が何よりも大切である.とかく心・血管系,腎,肺などに異質的障害,機能の低下を伴いがちな老人などに対する手術の安全度も増していることはこれまでには述べてきた1)し,術前に重要臓器の急性機能不全状態さえなければ,手術の禁忌となる状態は少なく,この1年半の間にも既往に心筋梗塞発作があつた2例,狭心症発作3例,重度僧帽弁狭窄症,心室中隔欠損症各1例に胃全摘,結腸切除,脾摘除,胆嚢摘除,下肢動脈血栓摘除などが行なわれ,いずれも順調な術後経過を辿らせることができた.しかし術後の心筋梗塞発作合併例もかなり報告されており2,3),しかも典型的な胸痛が少なく,また普通診断に役立つ発熱,白血球数の増加,血沈亢進,あるいは血清GOT,CPK値なども手術後早期には手術操作そのものによる影響も加わり,診断面で困難さを感じる場合も少なくない2).また本稿で述べるように,死に直結するような重篤な心機能不全の発生も開心術後などにだけ限定されたものでなく,とくに重篤な不整脈などは開腹術などのあとでも発生しうるものであり,しかも治療の必要性が高いものであるだけに常に関心を寄せていなければならない.
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