Japanese
English
特集 消化管の創傷治癒
抗張力を中心にしてながめた消化管創傷治癒
Wound healing in the gastrointestinal tract approaching from the view-point of tensile strength and its related factors
林 四郎
1
,
市川 英幸
1
,
荻原 廸彦
1
,
苅部 徳郎
1
Shiro HAYASHI
1
1信州大学医学部第1外科学教室
pp.953-960
発行日 1975年8月20日
Published Date 1975/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206301
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はじめに
手術手技が向上し,手術自体も安全なものとなつた今日ではあるが,手術的療法の基盤には創傷治癒を如何にして迅速,確実なものとするかという基本的な問題が存在しており,とくに不完全な癒合によつて腹膜炎や通過障害を惹起させやすい消化管の手術にさいしてこの配慮が大切である.また消化管壁には内容の通過,蠕動運動によつて大きな力が加わるだけに創癒合の程度を示す物理的特性,抗張力(tensile strength)や破断強度(breaking strength)にも関心を寄せることが必要である.さて創傷治癒過程の研究は決して新しい歴史をもつものはないが,対象が実験動物,しかも皮膚,皮下組織や骨,筋膜などに限定されているきらいがあり,消化管壁の癒合に関しても主として形態学的な面からの検討がその主流であつた1,2).筆者らはこの現状をながめて,消化管壁の治癒過程をムコ多糖膠原生成を中心にした生化学的反応,あるいは線維成分の増生に関係した物理的特性の面について検討を進めてきたので,筆者らが得た実験成績も含めて,抗張力からながめた消化管の創傷治癒について今日の見解をまとめたい.
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