連載 本のなる樹・2
こたつにもぐって雪をながめる
さくま ゆみこ
pp.180-181
発行日 2009年2月25日
Published Date 2009/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101387
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私が子どもの頃,冬は今よりずっと寒かったような気がする。東京に暮らしていた私の家にも軒下からつららが下がったし,雪もたくさん降った。子どもの私にとって,雪が降るのはわくわくする出来事だった。雪合戦ができるし,雪だるまや雪うさぎをつくるのも楽しいし,何より雪をかぶった街並みを見ると,いつもとは違う世界が出現したような気がして,胸を躍らせていたことを思い出す。
今,大人になってしまった私は,雪が降ると,家の前の雪かきをしなくてはならないなあ,と思ったり,電車が止まらないかと心配したりして,子どものときのようには無邪気には楽しめない。それでもしんしんと降る雪にあたりの騒音が吸い込まれ,見慣れた景色が綿帽子をかぶって一変するのを見ると,急に異次元に入り込んだような気がして,今でもわくわくしてくる。
冬のぜいたくの1つは,あたたかいこたつに入って,みかんを食べたりお茶を飲んだりしながら,窓の外の雪景色をながめること。窓の外に雪がなくても,本を開いて白く変わった世界をのぞいてみませんか。
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