Japanese
English
特集 腹部外科のPhysical Signs
視診の教えるもの
Guide of abdominal inspection
井口 潔
1
Kiyoshi INOKUCHI
1
1九州大学医学部第2外科
pp.417-422
発行日 1975年4月20日
Published Date 1975/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206220
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
近年,レントゲンを初めとする理学的検査や臨床検査室における化学的検査など諸種の検査法が発達し,早期診断や治療法の選択に大きな進歩をもたらしたとはいえ,診断学の基本はあくまで正確な問診と,それにひきつづいて行なわれる視診,触診,聴診などの理学的所見についての医師の判断にあることはいうまでもない.なかでも視診は患者に接した瞬間から始まり,問診と共に診断の第1段階として,触診,聴診,あるいは臨床検査法の選択に重要な示唆を与えるものである.豊富な経験と知識をもつ医師の"first impress-ion"はときに諸種の理学的,化学的検査法に優るものであり,診断の基本としての視診の重要性をよく認識することが必要である.
さて,今回の主題は腹部外科に関するものであるが,視診の範囲は腹部のみに限局するものでなく,疼痛があるときの患者の特有な体位,古来よりヒポクラテス顔貌と呼ばれる癌末期患者の顔,その他,黄疸,貧血,出血斑など,腹部疾患と関連ある重要な所見が全身各部位にあらわれることを忘れてはならない.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.