世界の手術室・1【新連載】
ポンペイとアメリカ
隅田 幸男
1
1国立福岡中央病院心臓外科
pp.696-698
発行日 1973年5月20日
Published Date 1973/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205807
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手術室はメスを握る者にとつて終生神聖なる仕事の場である.同時に研究と教育の場でもある.その歴史はおそらくは医学の歴史と共に始まつているものと思う.手近にある資料を紐解いてみるとHippocrates全集(Har-vard University Press,1968年版)のKAT'IHTPE-ION(In the Surgery)の章のⅡ節にも「手術に必要なものは患者,術者,助手,器械類,光源の場所,種類は…」と書かれており,さらに術者の姿勢,光の方向,助手の役目までがかなり詳細に記述されていることから,おそらくは今日のように特定の場としての手術室がすでに存在したものと思われる.著者は現存する最古の手術室ではないかと思われるPompeiiにある"外科医の家"を訪れてみた(①).その間取り図にもはつきりと"手術室"が区切られている.当時としてはかなり進んだ手術が行なわれていたらしく,手術器具も100種を上まわり,特にメス,ハサミ,ピンセット,サジ,ゾンデなどは種類がめつぼう多く,開創器に至つてはその構造は今日と何ら変らない.後に紹介するMunchen大学病院の手術室ではPompeii時代のものをそのまま使用しているのではないかと思われるほどそつくりの開創器を見かけて驚いたものだ.
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