外科医の工夫
腸手術術前の準備
宇都宮 譲二
1
1東京医科歯科大学第2外科
pp.699-700
発行日 1973年5月20日
Published Date 1973/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205808
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腸外科の歴史は感染症との戦いの歴史であるといわれる.腸内細菌が腸管外への感染による合併症のみならず,腸吻合部の治療障害因子として大きな意味を有することも知られている1).したがって大腸手術の前準備として術中,術後における腸内細菌をいかにして最低濃度にするかという問題について,尨大な試みがなされたにもかかわらず,いまだ議論はつくされていない2),その手段は機械的清掃(mechanical cleansing)と化学療法剤の経口投与による化学的腸内清掃(chemical cleansing)とに分けられる.主な論点は前者の単独がよいか? 両者の合併がよいか? また化学療法剤では何をどのように用いるのがもつとも効果的か? という点に集中されている.今日の時点では化学療法の併用に賛同する者が多く,その使用法はkanamycineまたはneomycineとtetracyclincの経口投与を術前短期間に行なうことが好気性および嫌気性菌の抑制効果がもつともよいという意見が多い2).Nichols3)らが最近提唱している方法は手術前日の午後1時,2時,11時にそれぞれneomycin 1 gmとerythromycin1 gmを経口投与する方法である.
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