Japanese
English
論説
術後吻合部潰瘍についての考察
Considerations on the postoperative anastomotic ulcer
村上 忠重
1
,
川俣 建二
1
,
渡部 洋三
1
,
沢田 芳昭
1
Tadashige MURAKAMI
1
1順天堂大学医学部外科
pp.677-686
発行日 1972年5月20日
Published Date 1972/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205609
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はじめに
1881年にTheodor Billrothが胃切除術に成功して以来89年の月日が経過した.1881年にはBillroth門下のWolflerが胃切除を行なわないで胃・空腸吻合術を施行している.これらの胃手術の対象はほとんどが,胃癌を主としたものである.胃潰瘍に対して胃切除術をはじめて行なつたのはRydygier(1882)によるといわれており,その後彼は1884年に潰瘍に対して単なる胃・空腸吻合術も施行している.欧米においても本邦においても当初は,胃・十二指腸潰瘍に対して,胃・空腸吻合術が多く行なわれていたようである.胃・十二指腸潰瘍に広範囲切除術を施行することを主張したのは,Fins-terer(1918)であつて,本邦で胃切除の方が多く行なわれるようになつたのは,東によると1932年頃からであり,欧米では1943年頃からであるという.
ところが,潰瘍症に対して手術を施行した後に,数カ月から数年の経過の後に,いろいろの後遺症が現われることが知られてきた.すなわち,小胃症状,吻合部狭窄,dumping syndrome,afferent loop syndrome,術後吻合部潰瘍,術後貧血,断端癌の発生などがあり,比較的珍らしいものとして骨萎縮,Kwashiorkor syndromeなどの代謝障害の報告もみられる.
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