Japanese
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特集 胃疾患アトラス 改訂版
各論
Ⅴ. 残胃にみられる病変
残胃吻合部潰瘍
Stomal /marginal ulcer
岩田 英里
1
,
杉本 光繁
1
,
河合 隆
1
Eri IWATA
1
,
Mitsushige SUGIMOTO
1
,
Takashi KAWAI
1
1東京医科大学消化器内視鏡学
キーワード:
吻合部潰瘍
,
消化性潰瘍
,
胃切除後
Keyword:
吻合部潰瘍
,
消化性潰瘍
,
胃切除後
pp.310-311
発行日 2022年10月20日
Published Date 2022/10/20
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000000466
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疾患の概要
吻合部潰瘍は1899年にBraunが胃空腸吻合術後の吻合部空腸に発生した潰瘍を報告したのが最初で,その後幽門側胃切除後のBillrothI・Ⅱ法やRoux-en-Y法再建吻合部の遠位側(十二指腸または空腸)に生じた潰瘍を吻合部潰瘍と呼ぶようになった(狭義の吻合部潰瘍)。近年は吻合部付近や近位側(胃)に生じた潰瘍も広義の吻合部潰瘍と診断されている1)。吻合部潰瘍の2/3は初回手術後5年以内に発症し,手術例の0.4~3.3%で,男性に多く,原疾患は胃潰瘍より十二指腸潰瘍が多い特徴を示す2)。通常の消化性潰瘍と比較し,出血,穿孔,狭窄などの合併症頻度が約30%と高いが,広義の吻合部潰瘍の合併症頻度は高くはない1)。狭義の吻合部潰瘍は胃切除時の迷走神経や幽門洞の処理不十分による高酸状態の持続が原因と考えられている。近年では酸分泌抑制薬の普及とHelicobacter pylori(H.pylori)非感染・除菌後の増加により良性潰瘍に対する手術症例は激減しているが,高齢化により併存疾患を有する症例が増加し,肝硬変や腎不全など消耗性疾患による粘膜防御機構の低下,血流障害,ステロイド・NSAIDs・抗血栓薬の服用など,吻合部潰瘍の原因や頻度も変化しつつある。また,膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy:PD),幽門輪温存膵頭十二指腸切除術,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術後に発症する報告が増えており,その病態の解明が待たれる2)。
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