Japanese
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特集 日常外科の総点検・Ⅰ
小児そけいヘルニアの治療の実際
The treatment of inguinal hernia in infants and children
飯島 勝一
1
,
松林 冨士男
1
Katsuichi IIJIMA
1
1佼成病院外科
pp.497-502
発行日 1972年4月20日
Published Date 1972/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205582
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Ⅰ.小児そけいヘルニアの概念
そけいヘルニアの手術は小児外科領域の中にあつて最も普遍的なものでありきわめて重要な疾患である.大変古い歴史をもつ本症の治療法として上げられている術式だけに関しても多数に上り,またその文献にいたつては枚挙にいとまがないが,乳幼児そけいヘルニアの治療の根本的原則については近年にいたるまで十分な考慮が払われていなかつたようである.これは多くの報告者が成人のそけいヘルニアを基盤として小児ヘルニアを取り扱つていたためで,小児ヘルニアの原因が成人の場合における腹筋構成の抵抗減弱に基づくのとは異なり,腹膜鞘状突起(processus vaginalis)の閉鎖不全にあることが認識されなかつたことに起因していたのではなかろうかと思われる.この腹膜鞘状突起の開存率は生下時80〜90%,また生後1年においても55%前後ときわめて高い22)が,この開存はヘルニアを起こす可能性があるということで必ずしもヘルニアを起こすわけではなく,実際にヘルニアの発生する頻度は小児人口の0.3〜13%22),一般に3〜4%と報告されている.腹膜鞘状突起開存という素因に強い啼泣や,りきみなどの腹圧を増加させるような因子が加わり,単に密着していた鞘状突起の滑らかな二表面が突然に剥離し,ここに腹腔内臓器主として腸管が脱出したたものが小児のそけいヘルニアである。
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