Japanese
English
特集 日常外科の総点検・Ⅰ
成人ヘルニアの治療の実際
Principles of inguinal hernia repair in adults
前田 昭二
1
,
湯浅 鐐介
1
,
小林 進
1
,
馬場 正三
1
,
内田 陽教
1
,
立川 裕弘
1
,
大菅 志郎
1
Shoji MAEDA
1
1前田外科病院
pp.485-496
発行日 1972年4月20日
Published Date 1972/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205581
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はじめに
鼠径ヘルニアの手術法についてはすでに多くの術式が発表されており,現在ヘルニアの手術は一般外科の臨床では,虫垂炎手術と並び最も普遍的なものの一つと言えよう.しかし,今日でも鼠径ヘルニアの再発例や不完全手術例をみることは稀でなく,日常安易に行なわれているこの手術にも一面意外な困難性のあることが感じられる.その原因としては,この手術が虫垂切除術と同様に,いわゆる初心者向きのものとされているのに,実際には鼠径部の局所解剖はやや煩雑で理解しにくいため,各組織の関係がはつきりしないまま,手術が行なわれる場合が少なくないためではなかろうか?また,今までの成書,とくに日本語の本ではヘルニアに関して良い手術書が少なく,外鼠径ヘルニアの発生病理およびその治療に重要な関係のある腹膜筋膜およびその門である内鼠径輪についての記載がわかりにくいため,いくら本で勉強しても実際の手術に必要な解剖学的な智識を得ることが難かしく,各組織関係を理解しにくいため,手術法に混乱をきたすことが少なくなかつたのではなかろうか?著者は近年では等閑に附されている鼠径部の局所解剖を再検討し,とくに今まではっきりした記載の少ない内鼠径輪部について考察を加え,外鼠径ヘルニアの手術法としては,その発生病理からみて最も合理的かつ生理的な治療法と考えられる内鼠径輪閉鎖を主とする根治手術を十年来常用し好成績を得ているが,ここにその経験を述べ大方のご参考に供したいと思う.
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