患者と私
「病気」ではなく「病人」を治せ
綿貫 喆
1
1東京慈恵会医科大学第1外科
pp.376-377
発行日 1972年3月20日
Published Date 1972/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205566
- 有料閲覧
- 文献概要
医者が治すべき対象は「病人」であつて.「病気」ではないと,私は平生から考えている.しかしこのことはいうに易くして,実行はなかなか難かしい.一口に病人を対象とするといつても,患者という一個の人格を対象とする場合,そこには人間対人間という複雑な関係が生じてくる.そして当然の結果として,その関係が調子よくいく時ばかりはなく,気まずい間柄になる場合もありうる.患者が順調に経過した場合には,その患者との間の関係がうまくいく例が多いが,奇妙なことには,患者が元気に退院してからその患者との関係がぷつつり切れてしまつて,そののち全く関係のない赤の他人(?)となつてしまう症例が大部分である.これにたいして,患者がうまくいかなかつたり,さらに不幸な転帰をとつた場合には,患者や家族との間に気まずい関係を生じることが多い.しかしかえつて,このような患者や家族との間の人間関係がスムースにいくこともある.人間関係というものは実に複雑である.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.