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特集 手術と出血対策Ⅱ
外科領域における出血について—その理論的背景
Haemorrhagic diathesis in surgical practice
神前 五郎
1
KÔSAKI Gorô
1
1大阪府立成人病センター外科
pp.311-317
発行日 1970年3月20日
Published Date 1970/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205050
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はじめに
血管に損傷があれば出血の起るのが当然である.しかし小さい血管,毛細血管よりの出血は止血機構が正常である場合,やがて止血に至るのが普通である.われわれ外科医がメスを加えて観血的治療を行なうのは,特別の例外を除いて生理的な止血機構に異常のない場合であるが,それでも手術侵襲の種類によつては,たとえば開心術のように出血傾向をきたして,止血困難な出血に遭遇することもある.このような突発的な出血傾向が体外循環,大手術,大外傷,大量輸血にさいして経験されているが,その原因として線維素溶解系の異常があげられている.しかしこの線溶の活性化が一次的のものであるのか,それとも血管内血液凝固が起つて二次的に線溶の活性化がひきおこされたものであるかについてはなお充分解明されたとはいいがたい.元来,手術侵襲そのものが止血機構に一定の変化をもたらすものであるから,これについて述べた上で上記の出血傾向の成因について論じてみたい.
最初にのべた特別な例外は,出血傾向を持つている患者に対する手術であるが,先天性の血液凝固障害症である血友病,あるいは後天性の凝固障害症としてある種の肝疾患があげられるが,これも前準備と,術後の強力な治療で出血を喰い止めることができるようになつた.また血小板減少症のうちITPのように剔脾手術が有力な治療手段となる場合もある.これらについても簡単にふれたい.
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