調査研究実践講座・11
指標のいろいろとその理論的背景[3]
林 謙治
1
1国立公衆衛生院母性小児衛生学部
pp.1030-1035
発行日 1982年12月25日
Published Date 1982/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206139
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第9回の講座で出生率・死亡率・婚因率・離婚率はで表現されることを述べた。また分母を性別,年齢別等に分類せず総人口を用いる場合を粗率(Crude rate)ということも付記した。ただし分母は人口動態統計では1年の中央時点(7月1日)における日本人人口を用いているが,地域調査においても同じようにその地域の年間中央人口を用いるのが普通である。
粗率はその名の示すごとく,ごく大ざっぱに出来事の頻度を知る指標であり,たとえば出生率では総人口を分母としているけれども正確さに欠ける。出産をするのは女性だけであるし,また女性なら誰もが出産可能というわけではないことから,15〜49歳の女性人口(再生産人口という)がもっと正確な率が要求される時によく使われる。もっとも再生産人口といっても,厳密に言えば未婚者,不妊の人,避妊中の人,妊娠中の人も含まれるので問題がなくもないが,1つにはそれほど厳密な指標が常に必要であるという訳ではなく,指標を用いた時点で使用目的にかなっていればよいということと,第2に詳しい情報は常に得られるとは限らないといった事情がある。
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