手術手技
人工肛門のつくり方
鍋谷 欣市
1
Kinichi NABEYA
1
1千葉大学医学部第2外科
pp.691-696
発行日 1968年5月20日
Published Date 1968/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204591
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
人間にとつて食物を摂取する口が絶対に必要であることと同様に,その摂取した食物を消化吸収したあとの不要物の一部,すなわち糞便を排泄する点において,肛門は絶対に欠くべからざるものであり,しかもその機能を十分に果たすことが望まれる.排便のできない疾患,たとえば先天性鎖肛,腸閉塞症,直腸癌による狭窄等の場合,そのままでは致命的となるのでまずできるだけ早期に排便を可能ならしめる処置をとらねばならない.かかる場合の処置としてその原因を除去し根治的手術を行なうことはもちろん大切であるが,救急的処置としてはしばしば人工肛門造設術が行なわれる.すなわち狭窄部の口側において,糞便を排泄できるような腸管の開口部を作成するのであるが,一般に,腸管壁の一部を腹壁に固定し糞便を排除させるものは糞瘻Kotfistelといわれ,したがつて一部の糞便は肛門側にも搬送されるが,これにたいして腸管の全内腔が体外に開口するように固定するものは人工肛門Künstlicher Afterといわれ,人工肛門以下の肛門側腸管には糞便が搬送されないものである.
このような人工肛門の役割によつて,人工肛門造設術は,実に多くの疾患に応用されている.したがつて今までにも幾多の方法が試みられているし,実際の症例に応じていろいろ工夫されるべきものと考える.
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.