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特集 肝腫瘍外科の課題
転移性肝癌の治療—肝切除と化学療法
Treatment of metastatic liver cancer: Hepatectomy and chemotherapy
伊藤 一二
1
Ichiji ITO
1
1国立がんセンター外科
pp.1543-1550
発行日 1967年11月20日
Published Date 1967/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204453
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はじめに
肝転移癌の予後は,きわめて悪く,一たび肝に転移をみればきわめて短期間内に患者を死に至らしめるものであり,諸家の成績よりみても平均生存期間は4ないし5ヵ月であり,9ヵ月で全例死亡するとされている.したがつて肝転移を治癒しえたならば,原発巣は手術的切除により治癒せしめ,肝転移をも根絶しうることになり,臨床的意義ははなはだ大といえる.しかしその治療法となると,原発性肝癌をも含めてきわめて悲観的であつて,現在未だ満足すべき域に達しているとはいえない.根治的治療法としては転移巣を含めて,手術的に肝切除を行なうことであるが,肝転移の早期診断の困難なことより,根治的切除を行なえるような限局性の肝転移に遭遇することはまれであり,また広汎な肝切除例は手術侵襲が大であり,その治療成績も決して良好とはいえない.また放射線治療が肝転移に関する限りほとんど意義をもたないことより,残された課題は化学療法である.
肝転移癌に対する化学療法については,多くの試みが報告されており,特に肝転移巣の栄養血管を通じて制癌剤を投与する局所化学療法としての肝動脈内挿管投与法については,1961年Ecker1),Miller2)の報告以来,多くの学者により追試されいちじるしい効果が認められている.われわれも過去4年間に多くの症例に対して,肝動脈内挿管投与法を行ない,その成績については,すでに数次にわたり発表してきた3)4)5).
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