診断のポイント
術後性腹部神経症
木村 忠司
1
1京都大学医学部外科
pp.1588-1593
発行日 1966年11月20日
Published Date 1966/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204157
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Ⅰ.術後性腹部神経症とはどんなものか
手術は一種の外傷を与えることであるから,その後ある期間は,後遺的症状を残すのは当然である.例えば開腹術後に癒着をまつたく残さぬなどということはなく,そのための腹部異和感は当然残るのであるが,幸いにして反応性炎症は暫時消退し,癒着は自然に解離して, 自覚症状もまた治つてゆくものである.
然るに一部の症例においては開腹術後の愁訴が1年〜2年またはそれ以上の長期間に亘つて続き,しかも再開腹を行なつてみても,愁訴に相当するだけの器質的変化を見いだしえないものがある.これらの症例の中にはしばしば精神神経症的要素が多分に含まれているものがあり,開腹術という損傷を契期として,両者が結びつき腹部に焦点を有する一種の器管神経症organneurosisを形成したと考えられる場合がある.このような症例群をわれわれは術後性腹部神経症postoperative abdo-minal neurosisと呼ぶのである.この命名は荒木千里教授でそれに関する報告は1950年著者が"反射性通過障害と腹部神経症"なる標題で雑誌『医学』に発表したのが最初であつた.
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