特集 小児外科疾患のQOL;最近の話題
中腸軸捻転症における腹部コンパートメント症候群と術後QOL
山内 勝治
1
Katsuji Yamauchi
1
1奈良県総合医療センター小児外科
pp.500-505
発行日 2025年5月25日
Published Date 2025/5/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000001191
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はじめに
腸回転異常症は中腸軸捻転による重篤な広範囲腸管虚血壊死を合併し,短腸症候群をきたす可能性のある疾患である。そのため中腸軸捻転と診断した場合は可及的速やかに捻転解除を目的とした外科治療を行う必要があるが,捻転解除を行っても捻転腸管の血流障害改善に乏しい場合がある。かかる場合,腸管温存を図る目的でsecond look手術が行われている1~3)。しかし,second look手術待機症例のなかには腹部コンパートメント症候群(以下,abdominal compartment syndrome:ACS)を合併する症例がある。ACS発症の原因は,捻転解除による腸管虚血再灌流が生じた結果,全身および腹膜炎症反応を誘発し,この応答中に放出された炎症性メディエーターにより好中球プライミング,腸間膜毛細血管透過性および腸管透過性の増加,腸管および腸間膜からの液体漏出,腸内細菌のトランスロケーション,細菌毒素の吸収へとつながり,続いて引き起こされる腹水増加および腹部内臓浮腫が腹腔内圧を上昇させ,ACSへと進展することが報告されている4,5)。われわれは腸管虚血を伴った中腸軸捻転症例に対してwound retractor(WR)によるサイロ吊り上げ法を応用し,ACSを回避しつつ直視下で腸管色調状態を観察し,至適時期で壊死腸管切除・腹壁閉鎖を行い,最終的には温存腸管の延長が得られ,術後QOLの改善に寄与できると考えられる症例を経験したので報告する。なお,本論の主旨は日本小児外科学会雑誌61巻2号に掲載されていることを申し添える6)。

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