トピックス
"サーモグラフィー"
桜井 靖久
1
1東京大学医用電子研究施設
pp.96-97
発行日 1966年1月20日
Published Date 1966/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203870
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はじめにThermographyとは何かというと,体温の分布状態を図または写真などの像に表わして研究するものであるといえる.
温度が絶対零度(0゜Kまたは−273℃)以上にあればどんな物質でも自ら赤外線を放射している.赤外線は一種の電磁波であり原子と分子の振動と回転によつて発生される.赤外線スペクトルは0.75μから約1,000μの間すなわち可視光線の長波長端とマイクロ波の間にある.物体が自然に放出している赤外線を検出してそのものの温度を測定しようというのが赤外放射温度計の原理である.さて人体の放射率(入射した放射線のすべてを完全に吸収する物体を黒体といい,この放射率は1である、放射や吸収の効率をいう)は0.99であつてほぼ黒体とみなしうる.したがつて人体表面から放出される放射エネルギーの量は殆んどその表面温度のみに依存すると考えてよい.ここで問題になるのは体温(300°K)程度の低温度の物体の放出している放射線の波長は比較的長いものが多く10μ位のところにピークがある.したがつて適当なフィルターを用いてこの範囲の波長だけを選択的に検出してやれば外乱やノイズを除去でき正しい体表面温度が計測できる.
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