海外だより
黒衣の女と白い砂(2)
桜井 靖久
1
1東京大学医用電子研究施設
pp.98-99
発行日 1966年1月20日
Published Date 1966/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203871
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サウジアラビア王国はアラビア半島の大半を占める大国で入口は800万とも2,000万ともいう.まだ遊牧のべドウイン族が多いからはつきりした人口が判らない.この国は一口でいうと日本の明治維新前後の時点にいる.首都リアドの街の中央の広場に公開刑場があつて毎週金曜日(回教国では金曜が一般の国の日曜に相当する)ここで種々の見せしめの処刑が公開される.軽い方からいくとまず鞭打ち.これも軽い罪のときは力の弱い老人が数回尻つぺたをぶつ程度であるが重罪になるにつれ力逞しい若人が数10回も鞭打つ.ある時,われわれの診療所にカフジ地区の警察署長が2人の若い男をつれてきた.飲酒と喧嘩の罪か何からしい.回教徒は絶対禁酒である.だから街中にバーなど1軒もないしパチンコ屋もない.クエートではホテルで紅茶というと赤ブドウー酒を,ソーダというと白ブドー酒を紅茶々椀に入れてそつと出すそうだ.サウジでは外国人でも人前で公然とメートルを上げると逮捕される,私室でひそかにのまなければいけない.石油会社のお蔭で酒の味を覚えたアラブ人がアルコール恋しさのあまりヘヤートニックを1瓶あけて頓死したなんて話もある.さてその警察署長がアラブ人の医師と何か話していてしばらくして帰つて行つた.
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