手術手技
冠動脈の手術法—(1)直接法
麻田 栄
1
,
武内 敦郎
1
1大阪医科大学麻田外科
pp.893-897
発行日 1965年7月20日
Published Date 1965/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203670
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昨年秋,東京で行なわれた第17回日本胸部外科学会におけるパネルディスカツション「胸部外科の将来」の席上,Albert Starr教授は心臓外科の将来の課題として冠動脈疾患の手術に言及されたが,改めてこの方面の外科の重要性とむずかしさを痛感させられたしだいであつた.世界各国でこの方面の研究がはじめられてから30年近い時が流れ,決して新しいテーマではないのであるが,心臓外科の他の領域のごとく,比較的短時日の間に長足の進歩をとげたものと比べて,今なお夫解決の点が多いのである.その理由として考えられる点は,1)冠動脈疾患がはなはだ多様性であるため,末梢動脈の閉塞性疾患のごとくに画一的な術式を全症例にあてはめることができないこと,2)罹患冠動脈が解剖学的にも機能的にも心筋と直結しているため,病変の程度に比して疾患としては甚だ重篤であり,かつその診断ならびに治療法も,末梢動脈疾患の場合にくらべてはるかに複雑かつ困難となつていることなどであろう.
したがつて現在,あるタイプの症例には種々の間接法(Myocardial revascularization)が適当とされ,一方他のタイプには直接法が行なわれている状態であつて,かかる治療法が一般には容易に普及せず,欧米においてもごく限られた施設で少数例の報告がみられるにすぎないのである1)2)3)4)5).
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