手術手技
冠動脈の手術(間接法)
田中 大平
1
,
津崎 滋
1
,
赤沢 章嘉
1
,
二宮 凛
1
,
永野 稔
1
,
田村 清孝
1
,
永津 正章
1
,
大橋 正世
1
,
大原 毅
1
1東京大学医学部附属病院分院外科
pp.1071-1076
発行日 1965年8月20日
Published Date 1965/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203708
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冠動脈疾患の手術療法は外科医にとつて一つの大きな夢である.そのうち,間接法は心筋阻血部への副血行路の形成を促すに過ぎないとはいえ,現段階においてさえ内科療法では得られない永続的な効果をもたらすことが,この方面を熱心に研究している一部の外科医達の間から多数に報告されている.しかし,Beckが臨床成功例を発表して以来20数年を経,しかもその間多くの新法が考案されたにかかわらず,まだ普遍化するに至らない.これは臨床手術例からの客観的データが採り難いために内科的療法との比較を十分になし得ないこと,動物実験においても手術による阻血部への機能的血流増加を証明すべき方法が確立されていないことによると思われる.元来,間接法を意図する理論的根拠は,正常心筋が血流の殆んどない冠動脈間毛細管吻合を多数にもつに対して,冠動脈閉塞患者の心筋ではこの吻合管が著しく発達して血流を通し,時には阻血部位と心嚢とが癒着してそこに新生血管が認められるという事実が,阻血部のblood supplyを支えていると推測させる点にある.したがつて,人為的にこの状態を作ろうとする間接的手術法の目的は,主として冠動脈管吻合の発達を,一部,心外膜に癒着した他組織あるいは異物を通じてのarterial bridgeの形成および冠外性血行路の新生を,十分に促がすこととなる.
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